自分が何をしたいのか?意志の強さの重要性
数年前私がまだ病院で働いていた時の話
ある時97歳の女性が両腕を骨折して入院してきた。
入院後3週間は発熱もあり危険な状態であったためベッド上で寝たきり生活を送っていた。
その女性に初めてあったのは病院の個室だった。
挨拶を済ませ、なぜ骨折したかを聞いてみた。
『地域の集まりで、最高齢の私を祝ってくれる会で転んじゃったの』
と笑いながら教えてくれた。
その時思っていたのは二つ
①何故この人は今の状態で笑いながらそんなことが言えるのか?
②転倒時の周りの祝う会の参加者は相当焦っただろうな
次の瞬間に彼女はやさしく問いかけてきた。
『私は家に帰れるかしら?』
正直答えに詰まった。
97歳の女性が、3週間寝たきりで、今は歩けない状態。
腕の状態、認知症などの疾患、足の筋力、家の状態、家族の状態
考えていくと乗り越えなければならない課題がたくさん浮かび上がったのだ。
そしてこう答えた
『わかりません。でも望むのであれば出来ることはすべてやります。』
当時の自分にとっては未知であった。
状態を聞いてみたが腕は少し痛いものの、認知症などは全くなく、家の状態は一軒家で手すり無、家族は娘が近くに住んでいる。
つまり一人暮らしというわけだ。
さて皆さんだったらどう思うか。
97歳両腕骨折の今歩けない女性が、手すりもない一軒家で一人暮らしが出来るまで回復できるか?
そんな考えがぐるぐる頭を回る中
彼女はこう発した
『私は帰りたいわ』『そのために何をしたらよいかおしえて』
その時の目は力強く、絶対に帰るという意思を感じた。
私は気圧されながらも、リスクマネジメントを考えながら自主トレメニューを伝えた。
1か月後
彼女は自分の足で立っていた。
まだ歩行器という補助具は使用していた。
やはり彼女の意志は本物の様だ。
私は勝手に私の判断で家に帰るのは難しいと思っていた自分を恥じた。
そこからの私のリハビリは、本人に言わせると『とても厳しい先生』だったらしい
厳しいと言いながらも彼女はそれを実行していった。私はその意思に応えた。
3ヵ月後
彼女は無事に自分の足で退院をした。
もちろん家屋評価から手すりの設置、生活導線の確保、そして介護保険とすべて準備はした。
自分の考えに勝手にとらわれていた。
97歳でも筋力はつく
自分の意志で帰ると決め、そのために必要なことをプロに聞きやり通した。
私は彼女に敬意を表する。
いかに自分の意志が重要か、そしてそこに身をゆだねることが出来るか?
退院する時
最後に彼女は笑いながら私にこう言った
『ありがとう』